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「仲居さん、二十四日、暇?」
 休み時間、同じクラスの(そこまで親しくない)磯部さんと青柳さんに声をかけられた。
「何かあるの?」
「クラスのみんなとか沢山誘って、クリスマスパーティーしようと思うの。磯部ちゃんの家で」
「私の家って、神社なんだけどさ! でもムダに広いし、騒ぐには丁度良くない?」
 ……神社でクリスマスを祝うのか。
 その日は塾も休みで特に用事はなかった。折角用事がない貴重な一日だから、家で勉強をしようと思っていたのだが。そんな私の浮かない顔を見て気持ちを察したのか、青柳さんには「やっぱり受験だし、忙しいよね」と言われた。
「うーん、そうなんだよね……」
「でも」
 磯部さんが遮る。
「中三の、ていうか、中学最後のクリスマスパーティーだよ? 一度しかないし、せっかくだからパーッと一日くらい息抜きしてもいいんじゃないかな?」
 確かにその通りだ。中三の冬は一度しかない。だからこそ余計に私の場合は勉強しなければいけないんじゃないだろうか。しかし、二人の盛り上がっている気持ちを萎ませるのも気が引けたので、行けたら行くという当たり障りのない返事をしておいた。すると二人は顔を見合わせて笑い、すぐさまこう言った。
「じゃあさ、お願いがあるんだけど、もし良かったら三組の栗城くん誘ってくれないかな。ほら、仲居さん栗城くんと家隣同士だって聞いて」
 ああ、そういうこと。
 大体納得した。彼女たちは三太のことが好きらしい。
(多分、青柳さんのほうだな)

 こういう出来事は今まで何度もあったので、私はすっかり慣れっこになっていた。「栗城くん」は、あれでなかなかもてるのだ。小さい頃から知っているとヤツを客観視することは難しいが、頑張って考えてみた結果、確かにもてる要素はある、ような、気がする。例えばもう伸びなかったら大したことはないが、十五才にしては身長が高い。そして多分物事を深く考えていないため、誰に対してもにこにこしている。さらに、三太は学年で一番頭が良いのだ。直接聞くのもばかばかしいので、あえて聞かないが、噂では三太は風が丘の推薦が決まっているらしい。頭が良いだけでは人気は出ないと思うけれど、「学年で一番頭が良いわりに気さく」というのは、憎らしいけれどポイントが高いことは頷ける。何にしても、三太はこの学校で目立つ存在には違いなかった。
 私たちがいくらよそよそしく振る舞ったところで、学校の子たちからすると、いつまで経っても私は所詮、あの三組の栗城くんの幼なじみの、仲居茜なんだって思うと、自分が三太のおまけみたいに思えて、心がチクッとした。

 だから、なおさら。よそよそしくすることを、やめられないとも思った。